理事長エッセイ
安松幼稚園の歌唱指導
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安松幼稚園の研究授業
――幼稚園(学校)は 教師力で決まる――
夏休みに入るとともに、猛烈な暑さが列島を覆っています。
日光を浴びることで、カルシウムの吸収を助けるビタミンDが皮膚で産生され骨が強くなると言われてはいますが、1学期後半からは、児達の脱水や熱中症に気を遣う中での教育活動でした。外での活動や運動は子供の成長に不可欠ですが、園でもお家でも、夏場は短い時間に限って行っていきたいものです。
さて安松幼稚園の玄関には
学校は教師力で決まる
教師力とは 先生の熱意と指導力
これが安松幼稚園の誇り
安松幼稚園に就職した先生方が、どのようにして実力を身につけていくかについて、本稿では触れてみたく思います。
それには、大きく2点あります
❶先生の人として持つ器
器には、
・素直さ(心を真っ白にして先輩の先生の話を聞くことのできる能力のこと)
・感動する心(情緒豊かで美的感受性を持っていること)
・あまりぶれることのない芯を持っていること などなど。
これらは、先生という職に求められる資質というより、人として、一人の人間として持っていてほしい器です。
これ以外に、先生としては、・子供に対する深い愛情や想い や ・先生という仕事に対する情熱や責任感も挙げられると思いますが、まずは人としての有り様が、根本的に大切で、その上に専門職としての成長が求められます。
❷専門職としての成長…研究授業
この項目は、先生個々の課題というよりは、職場に学ぶ制度があるかどうかという問題とかかわってくると思います。
安松幼稚園では、言語・歌唱・数・運動・絵画・発達障碍など色々な領域についての勉強会がありますが、ここでは研究授業について触れたく思います。
研究授業とは、それに当たった先生が、色々な文献や過去の教案を参考に、新しく授業案を作り、それに基づいた授業を全ての先生に参観してもらい、放課後に風通しの良い反省会を開きます。安松幼稚園では、平均して毎月ほぼ2回の研究授業があります。
今年の1学期の研究授業のいくつかをここに紹介しましょう。
☀5/24 前田先生 <表現>リズム・音楽
・安松幼稚園の教育の柱は情緒教育である。リズム,音楽,歌を通し、
表情豊かに情感いっぱいに表現する力を養う。これはまさに美的感受性を育てることに繋がる。
☀6/7 居村先生 <言語>「聞く力」を伸ばす
・聞く力を身につける
・状況に合った発言ができるようにする
☀6/12 津田先生 <ビジョントレーニング>「見る力」を伸ばす
・見る力を身につける
☀6/14 菅先生 <音楽>表情豊かに
・顔の筋肉をしっかり動かす
・表情豊かに縦長で口を開ける
・口を大きく動かし、滑舌トレーニングにも繋げる
☀6/20 竹口先生 <言語>四字熟語
・楽しみながら四字熟語を理解する
☀7/2 川俣先生 <満3歳児の誕生会に向けて>
満3歳児の発達段階に応じて
・話を聞いて理解して動く
・堂々と発表することを目指して
☀7/3 中村先生 <健康>開脚跳び
・腕や足の筋力,体幹を高める
・両足でしっかり踏み切る
☀7/4 奥野先生 <言語>:聞く力 記憶力の向上
見る→聞く→理解→考える→記憶→行動という一連の流れの中で
それぞれの力を育みたい
☀7/10 吉田先生 <健康>基礎体力作り
・腕や足の筋力,体幹を高める
・生活の中で 自然になめらかに体が動けるように
☀7/17 道幸先生 <健康>台上前転に向けての体幹づくり
・台上前転に必要な跳躍力をつける
☀7/18 大谷先生 <音楽>年長児の歌唱指導
・腹式呼吸の確認
・喉を大きく開き裏声を響かせる
安松幼稚園では、学校(幼稚園も学校の一つです)は教師力で決まると確信しています。それ故、新卒の先生や既に就職している先生方の実力をどのように高めていくかは、最大の問題となります。
先生の実力は大きく2点に分けられます。❶専門分野において、児達の発達段階に応じた知識が不可欠です。勉強会や本などから多くの知識の引き出しを持たなくてはなりません。❷もう一つは実際の授業における実力を高めなくてはなりません。授業において児達との触れ合いの中で、児達がつまずいているところ、うまくいっているところを瞬時につかみ取る力が必要です。そしてつまずいている児には、そのつまずきの原因をどのようにすれば打開できるかを、多くの引き出しの中から取り出して即座にアドヴァイスせねばなりません。うまくいっている児には、それに応じたさらにやる気にさせる声掛けをしなくてはなりません。
実は研究授業は、これら2点❶❷を同時に満たしてくれるのです。
研究授業では、事前に授業案を書いて参観者の先生方に渡しておくのですが、その授業案を書く中で❶の研究・学びが行われます。そして参観してもらう授業の中では、上の❷に記されたことがどの程度なされているかが参観されます。
そしてその後の風通しの良い反省会。ここでも❶授業案そのものが、その領域の専門性をどの程度学び反映されているかという、先生の今までの学びと現在の実力が浮き彫りになります。❷実際の授業においては、先生の目の前の状況を瞬時に見抜けたかどうか、そして児達に適切な指導の言葉をかけることが出来たかという、これら❶❷の2点について、参観の全ての先生の歯に衣着せぬ発言でもっての反省会が行われます。この風通しのよい反省会があってこそ、研究授業が多くの意味を持つのです。
これら研究授業の果実として、
・児たちの能力を引き出し
・先生方の教師力の向上 につながっているのです。
本稿は、安松幼稚園の根っこでもある研究授業について記しました。お読みいただければ嬉しいです。
暑い夏、心身の健康に充分気を配って頂いて、乗り越えていきましょう。