理事長エッセイ

先生の熱意と指導力が安松幼稚園の誇り

平成19年3月
理事長 安井俊明
強 い 心 を 育 も う
―― 強い心とは 勇気と優しさと思いやり ――
第4回唱歌・童謡コンサート(in泉の森ホール)を通して

 卒園・進級おめでとうございます。
 実は私には、今春の唱歌・童謡コンサートの舞台を通して、感動した二つの出来事がありました。
一つは、園児の勇気と先生の適切なる対応 二つ目は園児の優しさと思いやりです。
以下具体的に記します。

(1)園児の勇気と 先生の機敏な適切なる対応
 過日のコンサート中に、気分の悪くなった一人の園児がいました。その園児は「先生、しんどいです」と、会場中に響き渡る大きな声で助けを呼びました。
プロの歌手との共演という緊張の舞台で、自分のしんどいことを大きな声で言うには、どれほどの勇気が必要だったことでしょう。
私と園長先生は、誰が声を出して助けを求めているのか目を凝らしましたが、100人を越える舞台ではなかなかわかりません。
 その時ピアノを弾いていた伊藤先生が、「○○です」と応えました。その声に、そういう非常時に備え同じ舞台にいた藤原先生が、すぐに列に割って入って手を引いて連れ出し、舞台下から駆け上がった細川先生と二人で舞台裏に連れ出し介抱しました。
 平松先生は、その園児が回復して復帰できるかどうか、復帰できるなら一刻も早く復帰させてやりたいという想いから、舞台上と裏の控え室とを行き来してくれました。
 私は、ああいう緊張の場で、大きな声を出す事の出来る園児達を誇りに思うと共に、チームワークで機敏な対応をされた先生方に感動しました。(参観に来られていた消防署の方から、後日、救急の原点を見ましたとの、過分のお褒めのお便りを頂きました。)
 早速その園児とお母さんに、「大きな声で先生を呼ぶことが出来て偉かったね。それを勇気というのよ。」と、言葉を掛け、先生方のすばやい対応にも感謝を表しました。今思い出しても目頭が熱くなってきます。

(2)優しさと思いやり
 その直後の舞台での事です。しんどくなって退出した園児の隣の園児が、その後、全身を使って気持ちを表現し、顔いっぱいに口を開け、熱唱している姿を記憶されている方もおありだと思います。
 後日その園児のお母さんからお聞きした話ですが、「どうしてあんなに体をゆすって歌いだしたの。お母さん、早く止めてと思ったわ」と言うと、その子供曰く、「○○君が、しんどくて出て行ったので、○○君の分も一緒に頑張って歌わなあかんと思ったねん」と応えたそうです。それを聞いてお母さんは、自分の気持ちが恥ずかしくなったということでした。今タイプしながら、私もどっと涙が出てきました。この園児の優しさと思いやりに、どんな注釈も必要ないでしょう。
 以上のようなハプニングを含みつつ、年長さんの「第4回 唱歌・童謡コンサート in 泉の森」出演は、園児一人一人が威風堂々と平常通りの成果をあげ、先生・園児ともども、達成感に満たされました。

しかしどのようにすれば、こういう園児達が育っていくのでしょう。
 来賓の高木先生は、年長児が「園児たちが歌う心の旅」の8曲を歌い終わるやいなや、大きな声で「すごい」「すばらしい」と叫ばれ、周りの客席はもちろん舞台の先生にも届いたそうです。私の心に響いた2声でした。(高木先生は86歳になられますが、私が最も尊敬する先生のお1人で、約30年に渡ってご指導を頂いています。その豊かな人間性と感性を、私は常に仰ぎ見させてもらっています。)
 お帰りの時、「幼稚園のコンサートだからと簡単な気持ちで来ましたが、実に堂々としている事に驚きました。集中力といい、歌唱力といい、圧倒されました。」と、感想を述べられました。
 私は、「入園してからの積み重ねの成果です。人間としての基本的な部分が育ってこそ、あういう舞台が可能となるのです。」と応えました。

 あれだけの舞台は一朝一夕に出来るわけもなく、また歌の指導にたくさんの時間をかければ出来るというものでもありません。
入園してからこの舞台までに、人間力がどれだけ育っているかが決め手となります。
具体的には

自分の気持ちを込めた大きな声を腹から出せること
入園時から日常の挨拶や生活の中で、先生や年長さんの元気な張りのある声を聞いているうちに、自然と身についていきます。
→歌は豊かな声量がまず基本です。その後に、優しい声を目指します

相手の話を聞くときは、話し手の目をしっかり見て話を聞くという集中力
→指揮者の方をしっかりと見つめるという事につながります

「やる時はやる、遊ぶ時は遊ぶ」や「静と動」等のけじめ
→練習時や本番の舞台では、心の切り替えが必要です

物事をやり通すという持続力や我慢する心
→練習時に必要です

物事に対する情感や優しさ
→詩歌の表現力につながります

自分の考えや意見を堂々と発表するという勇気
→プロの音楽家と共演するには舞台度胸が必要です

お友達と心を一つに協力するという経験
→一人で歌うのではありません。100人を超える人数の合唱では、お友達全体を思いやる協力の心が必要です

等々の力がどれだけ育っているかという総合力の成果だと思っています。

 これらは、運動場いっぱいに体を動かして遊ぶ元気さ、画用紙いっぱいに自分の想いを描く絵画、阪神淡路大震災の話を聞いた時にその悲しさを受け止める感受性など、こういうものが基礎にあって、あの大舞台が出来上がっています。

 本番当日はむろん、練習中にも、園児達のひたむきさ・一生懸命の姿に何回泣かされたことでしょう……(笑)
こういう園児たちや先生方を見ていると、「日本もまだすてたものではない」という思いにさせられます。 
 卒園・進級にあたり、心から、勇気と優しさと思いやりのある
園児と先生方に乾杯!!

追伸
 来賓でお越し頂いた泉佐野市の教育委員長の岡村親一郎先生から、後日、下記のメールを頂きました。ありがとうございました。

 保護者(特に祖父母ら)が大変感動していました。この気持をそのときだけに終わらせず、子どもたちを通して家庭も地域をも巻き込んだ「強い心と身体」への意識改革をしてくれたらと願います。有難うございました。

岡村 親一郎

(安松幼稚園新聞第52号より)