理事長エッセイ

先生の熱意と指導力が安松幼稚園の誇り

令和3年3月16日
理事長 安井俊明
コロナ禍のこの一年 保護者の強い支持に感謝
――保護者の姿勢が 学校教育のレベル・方向性を大きく左右する――

 春の訪れと共に、風邪のひとつである新型コロナウイルス風邪も終息に向かうものと思われますが、流行の一刻も早い終焉を願うなか、本日、卒園・進級の日を迎えました。
卒園・進級おめでとうございます。
 令和2年度は、コロナ禍の中、緊急事態宣言による4・5月の休園で幕を開けました。新学期は6月開始となり、多くの学校では、日常の教育の内容や形態を大きく変更し、ほとんどの行事を中止しました。
 先ずは、安松幼稚園の基本的な考えを再度お話ししておきます。

 物事は一面だけを見ているとバランスが崩れ、大局的な判断ができなくなる。100%の安全・零リスクを追い求め(実際は不可能ですが)ていくと、失っていく代償はあまりにも大きすぎる。新型コロナ風邪に対する危険度と、自粛・中止することによる失っていく代償天秤にかけながら判断していく必要がある。
 私達は、こわがって、ウイルスから逃げまどっても、防げるものではなく、どのように向き合うかを考えなくてはならない。 怖い怖いだけではなく、病気の持つ怖さのレベルと、一度きりの人生の中で私たちの生活をみつめ、生活の質や潤いを大切にしながら、 それらのバランスをとって対応していかなくてはならない。

 安松幼稚園では、学校教育(幼稚園は学校の一つです)は人と人との交流の上に成り立つものと考えています。先生と子供との触れ合いの中から、多くのものが生まれ育っていきます。そして一人一人の子供にとって、今日という一日は、その時しかありません。
 安松幼稚園が大切にしている二本柱

●情緒教育……感動する心を育てたい。美しいものを見て聞いて美しいと感じる美的感受性を育みたい

●やり抜く力……困難や障害を乗り越え、情熱をもって最後までやり抜く力を育てたい

 これらを育成するためには、先生と子供達との触れ合いの中、日常の教育活動は当然として、様々な行事を欠かすことはできません。
 ウイルスの感染を100%防ぐことは困難ですが、徹底した消毒・換気・その他考えられる事すべてを為したうえで、何とか日常の教育・行事を実施していこうと考え・葛藤した1年でした。
 思い起こせば、個人懇談、授業参観・お誕生日会もし、プール・年長児の夕べの集い・運動会・文化発表会、末広公園でのマラソンなど、ほとんどの行事を、若干形態を変更したものがあっても、ほぼ例年通り成し遂げました。今日の日本の空気感の中、奇跡に近い気もします。それには、福沢諭吉先生の「学問のすすめ」にある『一身独立して一国独立す』の精神のもと、国・府からの指示を鵜呑みにするのではなく、園としての多くの情報収集と、医学的な学びが必要でした。そして、それらをやり遂げるには、何よりも子供達の成長と笑顔を見たいという幼稚園としての強い意志と大きな覚悟が必要でした。
 4・5月の休園の遅れを取り戻すべく、例年の短縮日を全日授業にすると共に夏休みを2週間に短縮し、人としての躾各分野領域における学び行事に取り組む姿勢など、例年通りの教育成果を上げることが出来たと自負しています。
 そういう中、毎年6月のお楽しみ音楽会は4・5月休園という事からも中止となりましたが、安松幼稚園では、歌唱は私達の生活の質を高め潤いを与えてくれるに必要不可欠なものと考えています。
そういう背景に思いを致しながら、園児間の距離や換気に気を遣いながら、6月以降、少しずつ練習を続けてきました。
 年少・年中・年長の3学年が一堂に会してのお楽しみ音楽会は、今年は中止と判断しましたが、そういう中、徹底した消毒や換気は当然として、考えに考え抜いて、

・学年ごとの授業参観で披露する

・ホールの舞台を2.5倍に広げ、園児の間隔を大きく確保する

・10分ごとに全面換気する

・保護者の参観を1名とする

等々の中、2月の中旬に披露できる体制を整えました。
 今年の出来栄えについて、この10年ばかり歌唱指導の大きな方向性を提示・指導して頂いている元大阪教育大学附属天王寺校舎の諸石先生は、「年少の滑舌が素晴らしくしっかりとした声が出せている。年中児・年長児に関しては、表情・表現が素晴らしく、声が揃い、その響きがとても良い。年中児は、地声と裏声の切り替えがスムーズにでき、年長児に至っては、裏声が頭声発声のレベルにまで進んでいる」と、絶賛して頂きました。

 1年間の思い出はこのあたりにして、論を転じてみましょう。
日本中の学校が、多くの行事を中止・縮小する中、安松幼稚園ではほとんどの行事を、若干形態を変更したものがあっても、ほぼ例年通り成し遂げることが出来たのはどういう理由によるのでしょうか。
 大きな考えは、冒頭の矩形の中で述べましたが、具体的には、何よりも子供達の成長と笑顔を見たいという幼稚園としての強い意志と大きな覚悟が必要だったのです。
さらに忘れてならないのは、保護者の強い後押しです。いくら幼稚園が前述の考えに基づき、強い意志と覚悟の中、何かの行事を実施しようとしても、多数の保護者が零リスクの方向を望み自粛・中止を第一と考えるなら、実施は不可能に近いでしょう。
コロナ禍の問題だけには限りませんが、一般論としても、学校のレベル・方向性は、保護者が教育に対して何を求めているかというレベル・方向性に左右されるということです。
 最後に、保護者の方からのお話・お便りを4通紹介し、コロナ禍のこの1年、幼稚園からの発信に強く賛同頂き、背中を押していただいたことに感謝申し上げます。
この2月9日に年長のお誕生会があり、年長・桜組 大野さんのお父さんが、「他では色々な行事が中止となる中、安松幼稚園に来ると、マスク越しではない子供の笑顔を見ることが出来、私も笑顔になり、本当に嬉しい。厳しい情勢の中、色々と考え工夫されての行事の実施、本当に感謝しています。」と述べられました。芝生への行き来の中で年中のきく組の前で立ち止まられ、クラスでの先生と子供たちの活動をじっと目にされて、情感溢れる上記のお話となりました。園として覚悟をもっての実施の中、大きな喜びと強い感謝の言葉を 身震いする想いでお聞きしました。
昨年12月の文化発表会後の年中・ばら組 北野さんのお手紙です
例年通り行事を開催して下さることに感謝致します。
再び感染者が増え毎日コロナの話題の中、何が正解か分らず過ごしておりますが、幼稚園からのお手紙にあった「生活の質と潤いを大切にする」この言葉にはっとさせられました。大人と子供の一年では、感じ方にかなりの差があると思います。年中の時にしか経験できないことや成長を奪ってしまうことの重大さ。安松では、その機会を奪わず幼稚園生活を送れていること、本当に感謝しかありません。
昨年2学期末の年中・ゆり組 西さんのお手紙です
このコロナ禍の難しい情勢の中で、毎年感じる感動を今年も経験させて頂けている事に、改めて感謝申し上げたいと思っています。
運動会の時、目の前で、全力で声をあげ力を出し切っている子供達を見て、何とも言えない清々しさがありました。
 日常の教育活動や行事をなすにあたって少しでも不安な要素がないように、幼稚園側の考えや私たち保護者が知らない様々な情報をいち早く保護者にお伝え下さり、しっかりとした園側の考えを提示して下さるので、不安なく過ごせる園生活。子供の成長に大切な行事を、出来るだけ例年通り行って下さる環境。こんな園は全国でも本当に数少ないと思います。他にないかもしれませんね!
 こういった予想もしなかった未曾有の事態でこそ、学校の対応に大きく差が出ると思います。そこはやはり、さすが安松幼稚園だったなと、この一年を通して痛感しました。
 大人の私も色々と不便に疲れている日々でしたが、運動会・発表会と、子供達は確実に力をつけてもらっています。
この2月10日の年少・うさぎ組誕生会における古川さんのお祖母さんのスピーチです。「世の中には、賢い子供を育てる学校はいくらでもあるが、安松幼稚園では、人間として歩んでいくところの一番大切な基礎、立派な人になるよう育ててもらっている。こんな幼稚園は、他にない(注:最後の項だけは直接コロナに関係のない話ですが、とても嬉しく拝聴しましたので付記しました)
最後になりましたが、今後の皆さんのご多幸を念じ申し上げます。