理事長エッセイ

先生の熱意と指導力が安松幼稚園の誇り

平成29年2月9日
理 事 長  安井 俊明
安松幼稚園の歌唱指導

年少の教室から 今年も

梅のこえだで  うぐいすは
春が来たよと  うたいます

ホウホウ ホケキョ

ホウ ホケキョ     

の歌声が聞こえてきました。

この歌声が聞こえてくると、もう立春、桜咲く春が、もうそこまで
来ているという実感が湧いてきます。
さてこの2月19日(日)に、第10回目となる安松幼稚園主催の 

新春 旅立ちコンサート
~ 伝えよう 誇り高き日本の文化 ~

が、泉の森ホールで開かれます。

  

 以下は、私が大阪教育大学附属天王寺で同勤しました音楽科の諸石先生の寄稿文です。諸石先生には時に来園頂き、歌唱指導などにおける音楽としての方向性を、色々とご教示頂いています。
 諸石先生から、安松幼稚園の実践している教育、そしてその上に立つ安松幼稚園の歌唱指導の内容・具体的な方法が素晴らしいので、それらを世に問い、皆さんに提示されてはという話があり、専門的な見地から以下の文をお書き下さいました。尚、長方形の中の注は、安井の手に依ります。



新春 旅立ちコンサート(於 泉の森ホール)に向けて

諸石孝文

 泉の森コンサートの開催を機縁とし、安松幼稚園の歌唱指導について、一つは考え方などの概論を、二つ目は、コンサートの個々の曲について具体的に記してみました。


●先ずは、大きな考え方から
 今年の泉の森ホールコンサートの曲目には、名曲、大曲、難曲がズラリと並んでいます。しかし、子供たちにとって、そんな大人の見方は、どうでもよいくらいに、楽しそうに曲を歌っています。時には、信じられないくらい軽々と。

 子供に譜面で教えるわけでもないし、先生が歌ってそれを真似させるだけですから、大人が難しいと思いさえしなければ、どんな曲でも歌えるはずです。
そして、曲想とか音楽的なことは、表情、表現(動作)を真似させることで教えることができるので、歌詞の内容が難しいから、この曲は子供には無理、ましてや5歳の幼稚園児に歌えるはずがないとかいうのは、大人の勝手な考え方です。
 問題は、どのような表現をするかということだけですが、それは、先生の仕事です。子供たちには、忠実に表情、表現を真似することを求めるだけです。

注1 真似ることの意味
教育の原点は、よい手本の真似をさせることです。教室や運動場での先生の長々とした説明は意味が無く、子供のやる気を失してしまいます。よい手本を見せて、さっと実技に入る。これが理想です。
体育・歌唱・詩の朗唱・楽器演奏以外にも、歌舞伎・狂言・落語などの古典芸能でも、全ては先生の真似から始まり、一つの基本・型を身につけていきます。
学ぶとは真似るであり、守・破・離の世界なのです。

注2 情熱ある先生の手本が全て
注1に記しましたように、教育とはよい手本の真似から始まります。
教育の質とは、先生の質です。その先生がよい手本を示すことが出来るかどうかにかかっています。

 そして不思議なことに、歌詞の深い本当の意味がわからなくても、良い表情、表現を身につけて歌える子供は、まるで全て理解しているかのように歌うことができるようになっていくものなのです。これはまるで、モーツァルトのピアノ曲の演奏は、プロの演奏家が弾くよりも子供が弾く方が時には自然に聞こえる、とよく言われることと似ているような気がするのです。つまり、モーツァルトのように、自然な流れを持つ名曲の場合、変に解釈された演奏よりも、子供の演奏の方が素直で自然に聞こえるということです。園児の歌でも同じことが言えると思うのです。
 子供たちは、大人では考えられないぐらいの速さで歌詞を覚えてしまいますし、表現の会得も速い。問題はそれを全員でピッタリ合わすことができるかということです。もちろん、歌いながら。

これが、合唱の出来映えを左右するポイントとなります。その根底には普段からのしつけ教育があって、それがあって初めてできることだということは言うまでもありません。

注3 しつけ教育が全ての始まり
しつけ教育によって集中力・持続力が養われ、その上に美的情緒が花咲くのです。

【具体的な指導】
●コンサートの曲 並びに より具体的な指導について メインは、年長児全員、100人による合唱です。
最初は唱歌2曲から始まるのですが、「君をのせて」は、小学校以上のクラスでよく歌われる名曲です。
「怪獣のバラード」は中学校ぐらいでよく歌われています。
喜納昌吉作詞・作曲の「花」も音程が上下して歌いにくい曲なのですが、安松幼稚園では、もう普通に歌える曲目の中に入っています。そういう曲を5歳児が歌います。
そして、特筆すべきは、何と言っても松任谷由美の「春よ、来い」と森山直太朗の「さくら」でしょう。共に名曲ですが、この大人の曲を園児たちが清らかな声で美しく歌い上げていく様は、聴いていても感動します。


【具体的な指導】 
裏声の使い方
も工夫しています。多くの他の幼稚園では、裏声の指導は行っていませんが、例えば、「さくら」では、最高音がGis(ソ♯)にまで達して、裏声を駆使して歌っています。他の曲でも、高音のF(ファ)ぐらいは、普通に出しています。他の幼稚園では考えられないことでしょうが、安松幼稚園では、裏声の子地声の子とグループに分け、それをミックスさせて高音を美しく聴かせる工夫をしています。曲によって、グループの編成も変わります。

 もちろん、その為の先生方のご苦労は並大抵のものではなかったと思いますが、そういう苦労を重ねながら、美しいものを創り上げてゆくという努力を、園児と共に日々行っています。

注4 チームでよい手本を示す
安松幼稚園はチームで指導しています。
歌唱においては、表情・表現の指導(手本)が最も重要ですが、それ以外に、歌声・ピアノも大切な要素です。

 「春よ、来い」では、最後に印象的な二部合唱を入れています。幼稚園で二部合唱というのも、普通はあまり行われていないことです。
 第2部のクラス合唱の方も名曲がそろっていますが、例えば、「めぐる季節」の中でも途中に、安松幼稚園独自で考え出したメロディーの入った二部合唱を取り入れています。ただ単に歌っているというのではなく、それが美しく響いているのです。


●最後に
 忘れないでおいて頂きたいことは、この演奏は、合唱団やクラブや課外活動での選ばれたメンバーによるグループ等の演奏ではなく、普通のクラスの子供全員による演奏だということです。
 歌の得意な子もそうでない子も含めて、音楽が専門ではない先生方が、安松幼稚園独自の方法で合唱に取り組んできました。
 しかも、放課後の時間に特別に練習したわけではなく、平素の授業の中の限られた練習時間で、しかも運動や制作などと並行しながら仕上げてきたものです。

 この時期は、最終的には風邪やインフルエンザとの闘いになります。子供たちの体と喉を守ることも含めて、保護者の方々とも、共に取り組んでいます。

 いろいろな面で、新しい挑戦をしている安松幼稚園ですが、このコンサートに向けての取り組みの一端を紹介しました。
是非、児童合唱団の指揮者の方や、小学校の現場の先生方等に見て聴いて頂きたいと思っています。

(文責 諸石孝文)

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