理事長エッセイ

先生の熱意と指導力が安松幼稚園の誇り

令和6年3月16日
理事長 安井俊明
安松幼稚園創立75周年記念にあたって
大震災被害の日本に寄せて
   自然を受け入れてきた民よ
     ――アンジェイ・ワイダ氏の寄稿より――

 今年は能登半島地震、援助に向かう海保の飛行機事故と、胸痛む年明けとなりました。そういう中、今年度は安松幼稚園創立75周年にあたり、それを記念して、3月8日に泉の森コンサートを実施することができたことを、心から感謝申し上げます。
 卒園・進級おめでとうございます。卒園生・進級生が、これから先、色々な自然災害や疾患を乗り越え、周りの人に対する優しさや配慮を失わず、力強くたくましく生き抜いてくれることを信じています。
 今回の能登半島地震を契機として、二つのエッセイを紹介したく思います。
●東日本大震災の混乱期における長谷川櫂さんの連歌です

【被災せし老婆の口を もれいずる「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」】
支援への切なく響く感謝の声に、返歌は
【身一つで放り出された被災者のあなたが そんなこと言わなくていい】

安井筆:日本人はどうしてこうなのだろう。こういう状況になっても周りの人のことを思い感謝の心を忘れない。こういう人柄・国柄を大切に、子や孫に伝えていきたいと思います。
●映画監督アンジェイ・ワイダ氏の一文です
ポーランドが生んだ世界的映画監督、日本をこよなく愛する一人で、日本美術の強い影響を受けたと自ら認める。「苦難の中でも楽観を失わない。それが日本人だ」東日本大震災の被害に立ち向かう日本人を励ますこの一文を、能登半島地震の被災者や私たち自身に贈りたく思います。以下、産経新聞(平成23年4月8日の記事)からの引用です。
 

大震災被害の日本に寄せて
自然を受け入れてきた民よ
日本の友人たちへ

 このたびの苦難の時に当たって、心の底からご同情申し上げます。深く悲しみをともにすると同時に、称賛の思いも強くしています。恐るべき大震災に皆さんが立ち向かう姿をみると、常に日本人に対して抱き続けてきた尊敬の念を新たにします。その姿は、世界中が見習うべき模範です。
 ポーランドのテレビに映し出される大地震と津波の恐るべき映像。美しい国に途方もない災いが降りかかっています。
 それを見て、問わずにはいられません。「大自然が与えるこのような残酷非道に対し、人はどう応えたらいいのか」
 私はこう答えるのみです。「こうした経験を積み重ねて、日本人は強くなった。理解を超えた自然の力は、民族の運命であり、民族の生活の一部だという事実を、何世紀にもわたり日本人は受け入れてきた。今度のような悲劇や苦難を乗り越えて日本民族は生き続け、国を再建していくでしょう
日本の友人たちよ
 あなた方の国民性の素晴らしい点は全て、ある事実を常に意識していることとつながっています。すなわち、人はいつ何時、危機に直面して自己の生き方を見直さざるをえなくなるか分からない、という事実です。
 それにもかかわらず、日本人が悲観主義に陥らないのは、驚くべきことであり、また素晴らしいことです。
悲観どころか、日本の芸術には生きることへの喜びと楽観があふれています。日本の芸術は人の本質を見事に描き、力強く、様式においても完璧です。
 日本は私にとって大切な国です。日本での仕事や日本への旅で出会い、個人的に知遇を得た多くの人々。ポーランドの古都クラクフに日本美術・技術センターを建設するのに協力しあった仲間たち。天皇、皇后両陛下に同行してクラクフを訪れた皆さんは、日本とその文化が、ポーランドでいかに尊敬の念をもって見られているか、知っているに違いありません。
 2002年7月の、あの忘れられないご訪問は、私たちにとって記念すべき出来事であり、以来、毎年、私たちの日本美術・技術センターでは記念行事を行ってきました。
日本の皆さんへ
 私はあなたたちに思いをはせています。この悪夢が早く終わって、繰り返されないよう、心から願っています。この至難の時を、力強く、決意をもって乗り越えられんことを。
                   ワルシャワより アンジェイ・ワイダ

 13年前の東日本大震災また今回の能登半島地震において、暴動が起こることもなく、恐るべき大災害に敢然と立ち向かう被災地の人々、また支援に励んで下さる多くの方々…
 上記の長谷川櫂さん、アンジェイ・ワイダさんと同じく、日本人の持つ秩序・思いやり・感性に心が動かされ涙が出ます。美しい桜も2週間ほどで散っていくという中に自分の人生を重ね合わせ、秋の虫の音に命のはかなさを感じ、全てのものが移り変わっていくという無常観を知らずのうちに身につけていく日本の民。それがゆえにアンジェイ・ワイダさんが言う「自然を受け入れてきた民よ。苦難の中でも楽観を失わない。それが日本人だ」という言葉になったのでしょう。
 長谷川櫂さんの言う「身一つで放り出された被災者のあなたの口から、感謝の言葉がもれてくる」とその切なさに言葉を失うことであります。
『わが国家とわが民族が、今後どのように生き残っていくか』を主体的に考察するとき、国民と被災者が相携えて復興への希望を繋ごうという想いの中、御製2首をお贈りして本稿を終えることとします。

●しきしまの
   大和心の をゝしさは
  ことある時ぞ
    あらはれにける

●ふりつもる
   み雪にたへて いろかへぬ
  松ぞ ををしき
    人もかくあれ

 最後になりますが、皆様のご多幸を念じ申し上げます。
また能登半島地震で亡くなられた方々に哀悼の誠を捧げると共に、被災された皆様の一日も早い復興を願っています。

 能登半島被災者の方々への義援金として、園児・保護者の方から 345,567 円 先生・幼稚園から 207,000 円 合計552,567 円が寄せられました。ありがとうございました。50,000 円を泉佐野市の福祉に、残りを石川県の義援金受付の方に振り込んでいます。